2020年シーズンで現役を引退した中日ドラゴンズの吉見一起。
ドラゴンズの黄金期に長年バッテリーを組んだ谷繁元信、昨年度沢村栄治賞を受賞した大野雄大、それぞれと1対1での対談企画が、メ~テレ(名古屋テレビ)のYoutube公式チャンネルにて公開されています。
信頼していた大先輩である谷繁や可愛がっていた後輩大野との、余計な装飾を一切排除した空間での、多少緊張感すら感じられる対談が非常に見ごたえがありました。
~ 目次 ~
谷繁との対談
メ~テレの深夜番組「Spoken」内で放送されたようですが、その完全版がYoutubeにあがっていました。
吉見が最も苦手にしていた天敵としてあげたラミレスもVTR登場して、素晴らしい対談になっています。
「吉見ー谷繁」バッテリーの勝率がえぐい
対談序盤で、二人で組んで投げた試合数や成績について触れられます。
吉見の通算成績は、
223試合 90勝 56敗 防御率2.94 勝率.616
となっています。
そもそも吉見の勝率えぐいですね。
防御率などと同じように勝率も歴代記録には、「2000イニング以上」という条件があるので公式の記録ではありませんが、歴代14位相当になります。
そして、以下が谷繁とバッテリーを組んだ際の成績です。
113試合 57勝 24敗 防御率2.54 勝率.704
驚異の勝率7割越え!
これは、公式の歴代記録のトップに相当します。
条件付きとはいえ、すごい数字です。
配球について
続いて配球についての話。
吉見はコントールが生命線のピッチャーで、最初から谷繁がキャッチャーとして受けていたので、このあたりの話も興味深いです。
吉見が谷繁の考える配球について、なんとなく理解できたきたのがプロ5年目の2010年ころからとの事。
最多勝を取った2009年時点では、まだただ出されたサイン通りに投げていただけって事ですね。
谷繁は、サインの意図にもっと早く気づけていれば、さらに勝てただろうと語っています。
また、吉見の思い出に残る配球として、2012年の高橋由伸との対戦をあげています。
![](https://dolphin-review.com/wp-content/uploads/2021/02/20210201_yoshimi.jpg)
この配球で打ち取った時、吉見は初めて(そして最初の最後の)試合中に谷繁にグータッチを求められて嬉しかったと。
この場面だけで5分間ほど語っていられるのもすごいです。
谷繁は、「浅尾ほど首を振られたピッチャーはいない」と、吉見と対比しているのも面白いですね。
吉見の天敵ラミレス登場
吉見が対戦するのが嫌で嫌でしょうがなく、よく打たれたバッターとしてあげたのがラミレス。
対戦成績は、
打率 .419 本塁打2 打点6
他に、谷繁と吉見共通で、阿部慎之助や小笠原道大の名前があがったり、吉見が嫌だったバッターとして李承燁が登場したりと、やはり当時セ・リーグの覇権を争ったジャイアンツの主軸には手を焼いたようです。
そしてここで、ラミレスがVTR出演。
「ヨシミさん、タニシゲさん、お久しぶりです。お疲れさまでした。ラミちゃんです。ヨロコンデー。ゲッツ!」とフルセットのギャグをかまして登場。
8年連続100打点を達成した際のスリーランホームランを思い出として語ったり、東京ドームとナゴヤドームでの対戦の違いを語ったりと、ラミレスも記憶力よく昔のことを覚えています。
谷繁がバッターボックスに立ったラミレスに話しかけたり、足の位置を確認して配球を決めていた話など、様々な駆け引きがあった事も語られています。
最後は自身のYoutubeチャンネル「ラミちゃんねる」をしっかり宣伝して終了(笑)
さて、吉見と谷繁の対談動画はさらに二本立てとしてもう一つあがっています。
こちらでは、コントロールについてや、ポストシーズン、引退後の趣味について語られています。
コントロールの話の中では、上原や菅野、川上憲伸の名前もあがります。
特に憲伸が谷繁のサインを無視して投げていたエピソードは笑えますね。
![](https://dolphin-review.com/wp-content/uploads/2021/02/20210201_yoshimi2.jpg)
画面外から少しスタッフが話しかけることはありますが、特に間に進行役がいるわけではなく、基本的に二人だけの会話で進むこの動画。
思う存分語り合っていて、良い対談でした。
大野雄大との対談
続いて沢村賞を受賞した大野雄大との対談として「エース論」。
こちらも「Spoken」で放送されたものの完全版の模様。
受け継がれるエース、吉見と大野の比較
まずは「受け継がれるエース」というテーマ。
吉見は入団時に川上憲伸がいてバリバリのエース。
その後、大野が2010年に入団した時は今度は吉見がエースで、大野は「吉見のようになりたいと思った」と、ドラゴンズのエースの系譜が語られます。
吉見と大野のバックボーンや成績の比較はこう。
吉見一起 | 大野雄大 | |
---|---|---|
京都府福知山市 | 出身 | 京都府京都市伏見区 |
金光大阪 | 高校 | 京都外大西 |
トヨタ自動車 | 大学・社会人 | 佛教大 |
2005年(希望入団枠) | ドラフト | 2010年(ドラフト1位) |
223 | 試合 | 182 |
90 | 勝利数 | 69 |
56 | 敗戦数 | 67 |
2.94 | 防御率 | 3.12 |
同じ京都出身、怪我持ちでドラゴンズに入団と共通点も多い二人。
吉見は、大野が入団した時から凄いなと感じて目を付けて、自主トレにも声をかけて目を掛けてきたそう。
だからこそ、2020シーズンの活躍を見て、
「すごいピッチャーになったね」(5:40)
と称賛する一方、
「良く言うと、今年凄いピッチャーになったね、と言えるけど、厳しく言うとちょっと遅いんじゃないかな、と」
と語り、大野ならもっと出来ると期待を寄せています。
大野は3年目から二桁勝利をあげるようになりましたが、同じくらい敗戦もあって、貯金が作れていないですね。
2010年ドラフト組としては、1位には話題になった早稲田の3人(斎藤祐樹、大石、福井)やジャイアンツに入団した澤村、八戸大の塩見やハンカチの外れ外れでヤクルトに入団した山田哲人らがいます。
ドラ1以外には、ソフトバンクに入団した柳田や千賀や甲斐、ライオンズの牧田や秋山翔吾、日ハムの西川ら。
改めてパ・リーグに人材が集まったなぁ、と思わされ、大学卒である事も考えると、たしかに大野にはもう少し早く二けた勝って、貯金も5や10作れるようになって欲しかったところかもしれません。
ただ、沢村賞を獲得したことで、この年のドラフト組の中では、育成指名の千賀に次いでピッチャーとしては一気に成功枠に駆け上がった感じがしますね。
たまに見る大野雄大の姿を見て、「この子間違った方向に行くぞ」
吉見が語った言葉で印象深いのは、2011年のオフに大野を自主トレに誘った時の思いを語った時。
・チェンがそのシーズンでMLBに移籍してしまうという事情
・大野が凄いボールを投げるという見込み
・(自分がそうだったというのもあって)「怪我あがりの人間を放っておけない」という思い
こういった事情もあったようですが、それ以上に2011年の大野を見ていて、「この子間違った方向に行くぞ」と心配になり誘ったと。
優しいですね、吉見は。
そして、よくぞこの時に大野を誘ってくれた、と感謝ですね。
ベストピッチ
続いてお互いのベストピッチを語り合うシーン。
吉見は今年の大野を、「殆どベストピッチじゃない?なにか掴んだな、と」と手放しで褒めています。
ただ、やはりその中でも9/14のノーヒットノーランの試合が語られます。
![](https://dolphin-review.com/wp-content/uploads/2021/02/20210201_yoshimi3.png)
「良い球いってますよね」
と大野自身も自画自賛すれば、吉見も
「いつもはチームが勝てばいいやと思って試合を見ているけど、この時はめちゃくちゃ応援した」
と興奮していた模様。
わたしの個人的なことを言えば、この日、たまたま名古屋を訪れており、時間があればナゴヤドームに試合を観に行こうかと思っていたのですが、都合がつかずに断念しました。
ホテルに帰って大野のノーヒットノーランのニュースを見て、なんとか都合つけて行けばよかったー、と後悔したのを覚えています。
エースの条件、エースの風格
谷繁との対談同様、大野との対談も動画2つに分かれています。
川上憲伸から吉見一起へ、吉見から大野雄大へと受け継がれたドラゴンズのエースの座。
吉見としては、次世代エースとして期待する選手として柳裕也の名前をあげています。
また、2020年のドラフト1位、中京大中京の髙橋も「映像見たけどすごいよ、エゲツない」と評価。
ドラゴンズは大野に続くあと一人二人先発ピッチャーが欲しいので、この二人には頑張って欲しいです。
吉見さんと一緒にローテーションを守りたかった
一本目の動画の最後に大野が語っていた言葉がグッときました。
「吉見さんと一緒にローテーションを守りたかった」
見事にこの二人は一緒に一軍のローテを守れた時期がずれちゃったんですよね。
吉見がある程度シーズン通してフルでローテを守れたのが2012年まで。
入れ替わるようにして大野が2013年から投球回が100を超え始める。
ただ、吉見が少し復活して100イニング以上投げれた2016年と2018年は、今度は大野が離脱。
吉見一起 | シーズン | 大野雄大 |
---|---|---|
156.2 | 2010年 | – |
190.2 | 2011年 | 4.0 |
138.2 | 2012年 | 44.2 |
36.1 | 2013年 | 146.1 |
15.0 | 2014年 | 165.0 |
48.0 | 2015年 | 207.1 |
131.1 | 2016年 | 129.2 |
75.2 | 2017年 | 147.2 |
125.2 | 2018年 | 27.1 |
19.2 | 2019年 | 177.2 |
17.2 | 2020年 | 148.2 |
※2010年以降の吉見と大野のシーズン別投球回
思い返せば、ドラゴンズの強い時期は、ローテーションをフルで守った二枚看板が存在しています。
今中慎二と山本昌、川上憲伸と野口茂樹、吉見一起とチェン。
もう叶わない夢ですが、吉見と大野が二人でフルにローテーションを守り、ドラゴンズを優勝させる姿が見たかったですね。
まとめ
Spokenの吉見引退関連の動画としては、他に同じトヨタ自動車出身の祖父江との対談などもあがっています。
吉見は本当に人柄が素晴らしく、おそらく指導者としても良いコーチになりそうですね。
怪我をした経験も大きいと思います。
なんとなくですが、監督と言うタイプではなさそうな感じがするので、立浪や谷繁(再登板)、憲伸あたりが監督をやる時のピッチングコーチとして、投手王国を再建してほしいです。
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