12月10日、マイディーさん死去の訃報が流れた。
亡くなったのは12月6日で、ご本人が既に公表していたように、癌だったとのことだ。
今年はCOVID-19(新型コロナウィルス)の影響で、直接的間接的に、コロナが原因の芸能人訃報のニュースが多く流れた。
また、毎年のことだが、コロナに関係ない訃報ももちろん沢山あった。
そんな中、このマイディー(Maidy)さんの訃報は、個人的に2020年の訃報の中で一番ショッキングだった。
わたしはマイディーさんと知り合いでもないし、しかもファイナルファンタジー14のプレイヤーでも無い。
マイディーさんの運営していたブログ「一撃確殺SS日記」(特にその中の「光のお父さん」に関する記事)が好きで読んでいたのと、ドラマ化された「光のお父さん」を観たくらいだ。
なのにこの喪失感はなんなんだろう。
ちょっと自分の中のこの不思議な感情を整理しておきたい。
(今回の記事は基本的に文字ばっかりです)
~ 目次 ~
「光のお父さん」はFF14プレイヤーでは無い人間にも衝撃だった
マイディーさんの存在を知ったのは、2016年の春か夏頃だったと記憶している。
当時の職場の同僚に、猛烈なFF14プレイヤーがいた。
猛烈と言うのは、自分が話を聞いた限りの印象だ。
新しいシナリオが追加されると、大体100番目前後くらいにクリアするパーティのメンバーだそうだ。
夜20時から21時くらいまでは残業が当然の環境だったので、大体平日は1~2時間くらいしかプレイ出来ない。
まとまってプレイ出来るのは土日くらいと言っていた。
そんな彼からFF14の話をよく聞かされたし、プレイを誘われたりもした。
FF14をプレイすることに興味が無かった訳ではない。
大学生時代には、初代リネージュを2年間ほどプレイしていて、MMORPGの楽しさは知っている。
また、FFシリーズに関しては、ナンバリングタイトルはオンラインである11と14以外は全てプレイしているし、特にⅣ、Ⅵ、Ⅶ、Ⅷ、Ⅹについては何周もプレイし、かなりやり込んでいる。
なので、FF14もハマる素養を持っていると思う。
ただ、今後やってみる可能性はゼロではないが、仕事で忙しい(という言い訳)、今から始めてついていけるか、などを理由に14については実際にプレイするに至っていない。
ならば、という訳でもないだろうけれど、彼から紹介されたのが、FF14プレイヤーであるマイディーさんの事と、マイディーさんが毎日書いているブログ「一撃確殺SS日記」の事だった。
「とりあえず読んでみて。絶対面白いから」
読んだ。
そしてはまった。
「一撃確殺SS日記」は毎日更新されていたので、通勤途中に読むのが日課になった。
そして特に好きだったシリーズが、「光のお父さん」の連載だった。
光のお父さん計画・・・・。
それは、60歳を超えるゲーム好きの父にFF14をプレイしてもらい、自分は正体を隠してフレンド登録。
共に冒険を続け、いつの日か自分が実の息子である事を打ち明けるという壮大な親孝行計画である。
一撃確殺SS日記「光のお父さん まとめ読み」より
詳しくはマイディーさんのブログを読んでもらいたい。
さらに壮大なその後の話へと続いていくが、とりあえず最初の区切りまで大体32話ほどで終わる。
一話一話のボリュームがすごいので、読了までそれなりに時間が掛かるが、3~4話まで読めばもう最後まで読まずにいられなくなると思う。
父との思い出、あるある話、MMORPGプレイヤー以外にも楽しさが伝わる読ませる文体
マイディーさん、実の父親がひょんなことからPS4を手に入れたので、さりげなくFF14に誘い、冒頭だけレクチャー。
「あとはもし興味があるならどうぞ」という体で無関心を装い、しかし実は旅(ゲーム)の先々で60歳を越えたゲーム音痴の父親が操作するプレイヤーを支援する。
徐々にゲームに慣れさせて、一つの大きなポイントとなるボスキャラクター(ツインタニアというそう簡単には倒せないボス)を倒したところで、
「実は支援していたプレイヤーはあなたの息子でしたー」
というネタ晴らしをしようというドッキリ計画。
これは、もう完結している話なので今読むと過去の話だし、ゆっくり読んでも数日程度でブログ記事は読み終わる訳だが、リアルタイムでこれを実行していたマイディーさんやその仲間たちにとっては、ロンドンハーツもビックリの気が遠くなるような壮大な計画だったと思う。
マイディーさんも最初は軽いノリで始めてしまったかもしれないが、「一撃確殺SS日記」でこの事を公開していた手前、引けに引けなくなった部分もあるかもしれない。
(宣言したらやり切るタイプの方のようなので、引くつもりなど無かったかもしれないが)
すごいなと思うのが、この計画を知らないのは、言ってしまえばマイディーさんの父親だけで、他のFF14プレイヤーたちは知っているのだ。
父親のプレイヤー名は明かされていなくても、種族や服装などから周りは察しがついたりもするだろう。
その時に、「あなたに最近色々とレクチャーしているMaidyというプレイヤー、あれ、あなたの息子さんですよ」と、愉快犯として暴露するプレイヤーがいてもおかしくないと思う。
そんな事にならずに、最後までこの計画が完遂されたことが驚きだ。
そして、計画自体も楽しさそうな計画だが、マイディーさんのブログの文体も、人を引き込む不思議な力がある。
父親とのリアル世界での過去のエピソードとゲーム内の出来事をリンクさせて、クスっとさせられたり、ホロリとさせられたりする。
また、MMORPGの初心者あるあるなども、けして初心者を馬鹿にすることない絶妙な感じで上手くネタにしている。
ヘビーユーザであるMaidy目線と、ゲーム初心者の父親プレイヤーの目線とを取り込んでいるから、FF14やMMORPGのプレイ経験が無いような層でも楽しめる連載になっているのだ。
わたしが同僚からFF14の熱い話を聞いていた時は、正直FF14初期のグダグダだったころの状態の情報しか持ち合わせていなかった。
だから、最初は話を聞きながら、内心は「ふ~ん、そうなんだ」くらいにしか聞いていなかった。
だが。
マイディーさんのブログを見てから、どんどんプレイしてみたい願望は高まったし、興味が引かれていった。
そういう意味で、むしろFF14プレイヤー以外の方こそ必読かもしれない。
あれよあれよと書籍化、ドラマ化、映画化の流れが壮大でワクワクした
わたしが同僚からマイディーさんのことを教えてもらった数か月後、光のお父さんの連載の書籍化とドラマ化が発表された。
ドラマは深夜枠での放送だったが、主役(マイディーさん役)を千葉雄大さん、お父さん役を大杉漣さんが演じるという豪華キャスティングだった。
その経緯も、マイディーさんのブログに「光のぴいさん」という新しい連載としてアップされている。
個人的に大杉連さんが好きだったので、それだけでもこのドラマは見る価値あるのだが、これをドラマ化するにあたってポイントとなる「ゲーム内のやり取りをどうドラマとして再現するのか?」という点を、実際にマイディーさんたちがFF14のサーバ内でプレイして、それを撮影してゲーム内パートとして使っているという取り組みでクリアしている部分が胸アツだ。
オンラインゲームの可能性が限界突破した瞬間だろう。
他にも、言ってしまえばただの一FF14プレイヤーの、一プレイ記事が、天下のスクウェア・エニックス上層部を動かしてまで書籍化・ドラマ化されていく流れが、リアルRPG(変な言葉だが)の様で面白い。
わたし目線で例えるならば、FFⅦの主人公クラウド(Maidyさん)やその仲間であるティファ/バレットらアバランチのメンバーたち(Maidyさん運営のFF14内のギルドのようなもの「FC じょびネッツア」メンバー)が、様々な試練を乗り越えながら、ラスボスであるセフィロスに戦いを挑んでいく様子を、自分がFFの世界のNPCキャラとなって、見聞きしている感覚なのかもしれない。
「光のお父さん」はその後、映画化もされていく。
FFⅦが、アドベントチルドレンや、クライシスコアのように、派生の作品が制作されていったのと同じ様だ。
ドンドンとその輪を大きくして広がっていく様が胸躍る。
吉田直樹P/Dとの交流は単純に羨ましかった
ドラマ化するにはいろいろな権利問題からも、当然スクウェア・エニックスの了承が必要だ。
その交渉過程でマイディーさんはFF14の吉田P/Dと対面を果たす。
二人は出会って以降、片やFF14の制作側、片やFF14のプレイヤー側として、不思議な結びつきで友人同士となったようだ。
ただ、最終的にはドラマ化の流れの中で直接出会うことになるのだが、実はドラマ化の話以前から「一撃確殺SS日記」を吉田P/Dは読んでいたらしく、以前からずっとマイディーさんのことを認識というか、強く意識していたのだ。
その吉田さんも、今回のマイディーさんの訃報を受けて、メッセージを出している。
吉田P/Dご本人が、この件に関してどこでメッセージを出そうかと悩んだ末、「今回だけ、僕の我儘を許してください。」と断って、FF14の公式開発ブログに投稿している。
吉田P/Dとマイディーさんの交流がどれほどのものだったか、これだけで分かる。
わたしはFF14のプレイヤーでは無いが、それなりに(特にⅢ~ⅩⅡあたりまで)FFシリーズをやり込んできたと思っている。
そんな立場から、プレイヤーと開発側と言う垣根を越えて、お互いに「このゲームを一緒に作り上げてきたんだ」という同士として認め合う関係になれている、という関係性が、ただただ単純に羨ましくある。
このあたりの関係性も、「光のお父さん」や「光のぴいさん」のブログ記事を読んでもらったり、お二人へのインタビュー記事を読んでもらうとより深く理解できると思う。
→吉田直樹×マイディー FFのドラマ化という前代未聞の偉業と人生の中でのオンラインゲーム【FFXIV 光のお父さん:対談】
「一リットルの涙」との類似点から来た感情
冒頭で、マイディーさんの死に対して、FF14プレイヤーでも無いし、マイディーさんと個人的な繋がりがある訳でもないのに、2020年の訃報の中で一番ショックを受けていると書いた。
この喪失感の原因は何故なのだろうか。
わたしは普段、色々なドラマを何本も観るほどのドラマ好きという訳ではない。
扱うテーマだったり、プロモーション映像を見たり、レアケースではあるが出演者に惹かれたり、といった理由で、興味の湧いたドラマを1クールに1本程度、観るか観ないか、という程度だ。
そんな、大して豊富なドラマ視聴の経験がある訳ではなくて恐縮だが、生まれてから40年ちょっとの中で、最も感動し心に残っているドラマが、2005年にフジテレビで放送された「一リットルの涙」というドラマだ。
このドラマは、「脊髄小脳変性症」という難病に掛かってしまった木藤亜也さんという方が、病気を告知された中学3年生の頃からずっと付けていた日記をベースに制作されたドラマで、まだ「別に」事件が起こる前の沢尻エリカが主演を演じている。
わたしが初めてテレビドラマのDVDボックスというものを購入したのがこのドラマで、何十回と繰り返し観ているのに、何度観ても泣いてしまう作品だ。
マイディーさんの人生が、木藤亜也さんとダブるものがあり、だからわたしはショックを受けているのかもしれない。
マイディーさん、ずっとブログを一日一記事書いていたのが、最後の方では、飛び飛びとなり、また、文章もかなり誤字が混ざったりするなど、体調悪化がブログから伝わってくる。
このあたりの、弱っていく様子がよく分かる点と、しかしそれでも本人の
「なんとか文章を書きたい」
「自分が生きていた証を最後まで残しておきたい」
という意思が見えるところが、「一リットルの涙」の最終盤のデジャブなのだ。
最後に
まとまらない文章になってしまった。
とにかく、マイディーさんに対する思いと感情を残しておきたくてブログに書いた。
「一撃確殺SS日記」はFC2ブログで運営されているし、マイディーさんはTwitterアカウントも持っていて、そちらでも情報発信を行っていた。
こういった場合、アカウントはどうなるのだろうか。
特に「一撃確殺SS日記」は、FC2ブログの有料版だとしたら、どこかのタイミングでブログも閉鎖されてしまうのだろうか。
訃報を受けて、幾つかブログを読み返してみたが、年末年始にでも、もう一度、最初から最後まで一気読みしようと思う。
(追記)2021/1/22にマイディーさん追悼動画公開
年が明けて1/22に、FCジョビネッツァのメンバーが中心になって作成された追悼動画がYoutube上に公開されました。
動画にコメントを残すことも出来ます。
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