【プロ野球】2020年の沢村賞の行方と過去の受賞者との比較

野球場野球

昨日、2020年のセ・リーグのレギュラーシーズンが終わり、パ・リーグもCSでソフトバンクが貫録の勝利で日本シリーズ行きを決めました。

レギュラーシーズンの成績が確定し、個人タイトルも決まりました。

日本シリーズを残しており、11月21日から開幕しますが、その日本シリーズ開催中の23日に、今年の沢村栄治賞、通称「沢村賞」の受賞者が発表されます。

タイガースの西投手や、オリックスの山本投手も素晴らしい成績を残しましたが、今年は読売ジャイアンツの菅野智之投手と、中日ドラゴンズの大野雄大投手の2択と言っていいでしょう。

既に色々なところで比較されたり、どちらが受賞すべきか議論されておりますが、あらためて過去の受賞者の成績などと比較してみたいと思います。

レギュラーシーズン成績

菅野智之と大野雄大の成績比較

沢村賞の選考基準7項目と、両選手の成績を表にすると以下のようになりました。

ここで、赤太字の部分が選考基準をクリアしている項目となります。

菅野智之(巨人)選考基準大野雄大(中日)
14勝勝利数(15)11勝
131奪三振(150)148
3完投(10)10
1.97防御率(2.50)1.82
137.1投球回(200)148.2
20登板数(25)20
.875勝率(.600).647

この7項目の中で、率となるものが防御率と勝率の2項目。
この2項目は両者基準を満たしています。

残りの5項目は積み上げ型の数字となり、新型コロナの影響で試合数が減った今シーズンは、そもそもこの基準を満たしているかどうかで判断することはフェアじゃないと思います。

そんな中、唯一基準を満たしいているのが大野雄大選手の完投数。
この大野選手の完投数10というのは、特筆すべき数字だと思います。
というのも、ここ10年(2010~2019年)で、この基準を満たした沢村賞受賞者は2011年の田中将大投手(14完投)と、2018年の菅野智之投手(10完投)の二人だけだからです。

143試合換算の比較

今シーズンは120試合制で実施されました。
近年の受賞者との比較、また、沢村賞選考基準との比較の為に、積み上げ型数字を143試合換算してみると以下になります。

計算方法は、各項目を(143/120)で乗じて、四捨五入しました。
※投球回の分数部分は面倒微々たるものなので無視しています。

菅野智之(巨人)選考基準大野雄大(中日)
16.7勝勝利数(15)13.1勝
156.1奪三振(150)176.4
3.6完投(10)11.9
1.97防御率(2.50)1.82
163投球回(200)176
23.8登板数(25)23.8
.875勝率(.600).647

こうすると、二人とも奪三振数で新たに選考基準を満たしました。
そして、勝数で菅野選手が基準を満たすこととなり、換算前に完投数で基準を満たしていた大野投手も含め、二人とも4項目で選考基準を満たしたことになります。

・過去に4項目での受賞者がいた(2003年の斉藤和巳投手や2004年の川上憲伸投手など)
・短縮シーズンとなりスケジュールも詰まった事情を加味すれば登板数は共に23.8回(基準は25回)と少し足りなかっただけで殆ど影響なし

といった事を考慮すれば、「受賞者無し」にはならないのではないでしょうか。

ちなみに、2019年シーズン、日ハムの有原投手、ジャイアンツの山口投手のように、複数の4項目達成者がいたにも関わらず受賞者無しとなったシーズンもあったので絶対ではないですが。

2019年シーズンの試合数で換算しておりますが、過去には143試合制じゃなかった年もある訳で、この数字を用いて判断するのが正しいのか微妙ではあります。

ただ、長らく130試合制だった時期を経て、交流戦の関係などから2000年代中盤以降は140試合以上で行われるようになりました。
投手分業制が進んできてあまりに昔の数字と比べることに意味があるのか微妙な中、ここ十数年のトレンドと比較するには、おかしい換算の仕方ではないと思います。

各項目の歴代受賞者最小(最悪)記録

各項目を選考基準値と比較してみると、大野投手の勝ち星、菅野投手の完投数、両者の投球回数が、基準値と乖離しています。

過去の受賞者の最小記録はどうなっているのか調べてみました。

最小勝利数での受賞は1988年の大野豊(広島)

今回、菅野投手を沢村賞に推す声の理由として圧倒的なのは、大野投手の勝ち星が少なすぎることでしょうか。

11勝だと確かに少なすぎですが、143試合換算で13.1勝。

ただ、1988年の大野豊投手(同じ大野でややこしいですね)が13勝で受賞しているので、大きな問題にはならないのではないでしょうか。

ちなみにこの年の大野投手、選考基準を満たしていたのは4項目のみでした。

最小完投数での受賞は2012年の摂津正(ソフトバンク)と2016年ジョンソン(広島)

この二人が完投数3回で受賞しています。

菅野投手が143試合換算前で同数の3、143試合換算で3.6回なので、これも受賞出来ない理由にはならなそうです。

摂津投手は5項目の基準を満たしましたが、ジョンソン投手は4項目のみです。

最小投球回での受賞は1992年の石井丈裕(西武)

西武の石井投手が148回1/3で最少記録のようです。

菅野投手はこれを下回りましたが、143試合換算なら上回るので、そういう意味でも勝利数の最少記録を143試合換算前だと下回ってしまう大野投手と同条件と言えそうです。

ただ、この年の石井投手は救援登板もありました。
それを除くなら(石井投手は受賞している訳で、除く意味も特に無いんですが)、2016年のジョンソン投手の180回1/3が最小のようです。

2019年の受賞を逃した二人と比較

2019年シーズンは、先にも少し触れましたが、有原投手(日ハム)と山口投手(巨人)が、二人とも4項目を満たしながら受賞を逃し、沢村賞は該当者なしとなりました。

これ以前の該当者なしは2000年まで遡ってしまい、単純比較するには時代がちょっとずれる為、菅野投手と大野投手の成績(143試合換算)を、2019年のこの二人と比較してみました。

選考基準菅野智之大野雄大有原(2019)山口(2019)
勝利数(15)16.7勝13.1勝15勝15勝
奪三振(150)156.1176.4161188
完投(10)3.611.910
防御率(2.50)1.971.822.462.91
投球回(200)163176164.1170
登板数(25)23.823.82426
勝率(.600).875.647.652.789

比較してみて、やらなきゃ良かったとちょっと後悔。

というのも、防御率こそ2019年の二人より、今シーズンの菅野、大野が大分数字良いですが、他は(大野投手の完投数を除くと)結構似た数字になってて、下手したら今シーズンも該当者なしになりうるのでは無いかと思ってしまった為です。

ただ、2019年の有原投手と山口投手が受賞していたとなると、先ほど触れた摂津投手やジョンソン投手受賞時の完投数最小記録(3)を塗り替えてしまっていたことになります。
特に山口投手は完投数がゼロ。ゼ、ゼロ。。ですから。

そもそも沢村賞の意義とは、

完投型先発投手

wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%A2%E6%9D%91%E6%A0%84%E6%B2%BB%E8%B3%9E)より

という事なので、さすがに完投数0や1の投手にこの賞は与えられない、ということなのでしょう。

選考委員長の堀内さんも

「賞のレベルをこれ以上、下げたくないというのが5人の意見。完投しなくてもいいとなると、沢村さんの名前に傷をつけてしまう」

スポーツ報知(https://hochi.news/articles/20191021-OHT1T50272.html)より

と仰ってました。

となれば、

菅野投手:16.7勝と防御率で昨シーズンの二人に勝り、完投数も最低限の3
大野投手:13.1勝は少し見劣りするが、それを補って余りある防御率と完投数

という事で、やはり今年はちゃんとどちらかが沢村賞を受賞して問題ないように思えます。

特筆すべき過去の選考

ここまで、過去の受賞者の成績などとも比較する為に色々調べていて、物議を醸した選考などを改めて思い出したり知ることが出来たので、ちょっと幾つか過去の選考を振り返ってみます。

1966年(村山実と堀内恒夫の同時受賞)

1982年から記者投票ではなく、選考委員による審議によって決められることとなった沢村賞。

2020年シーズン現在、選考委員長を堀内恒夫さんが務めていますが、その堀内さんが最初に受賞したのが1966年。

この時は阪神の村山実さんとの同時受賞だった訳ですが、数字を並べてみてもどう考えても村山さんが圧倒しているように見えます。

当時は記者投票の時代だったので、読売に対する忖度があったのかなぁ、などと穿った見方をしてしまいます。

下表に基準値を載せていますが、選考基準7項目は1982年から設けられたようなのであくまで参考です。
当時は明確な基準が無くて印象度の割合も今より大きかったんでしょうね。

村山実選考基準堀内恒夫
24勝勝利数(15)16勝
207奪三振(150)117
24完投(10)14
1.55防御率(2.50)1.39
290.1投球回(200)181
38登板数(25)33
.727勝率(.600).889

1981年(江川ではなく西本聖が受賞)

1982年から選考委員会方式になる、そのきっかけとなった事件の選考。

数字的にはどう考えても江川卓の受賞が妥当(というか圧倒的)と思われる中、受賞したのは同じ巨人の西本。

こういう事があるから、記者投票関係はすべて記名式にして欲しいものです。
江川の入団時の経緯が褒められたものでは無いのは分かりますが、成績はそれとは関係ないと思いますので。

1966年同様、下表に載せている選考基準値は当時無かった為、あくまで参考情報です。

西本聖選考基準江川卓
18勝勝利数(15)20勝
126奪三振(150)221
14完投(10)20
2.58防御率(2.50)2.29
257.2投球回(200)240.1
34登板数(25)31
.600勝率(.600).769

2003年(井川慶と斉藤和巳の同時受賞)

私がプロ野球をリアルタイムに見始めたのが1980年代後半から。

過去にリアルタイムで見てきた選考の中で、ドラゴンズファンだった自分としては、1993年~1994年の今中投手→山本昌投手の二年連続ドラゴンズの投手受賞など、沢村賞に対する思い出は色々とあるのですが、最もワクワクしたのは、2003年の選考だったように思います。

昔と比べて登板間隔が中5日や中6日で間隔が空くようになり、現在ほどではないにしろ中継ぎ、抑えという役割分担が明確化されてきたこの頃、20勝投手なんてそうそう見れないと思っていたにも関わらず、セ・パ、両リーグで20勝投手が誕生。

この年、セ・リーグは阪神が、パ・リーグはダイエーが制して、この二人がエースとして君臨する両チームが日本シリーズで激突。
シリーズ後、どちらが受賞するか楽しみにしていて、結果は二人同時受賞。
セ・パからそれぞれ一人ずつ選ばれての同時受賞は史上初との事でした。

やや個人的に斉藤和巳投手推しだった記憶がありますが、全く文句のない選考でした。

井川慶選考基準斉藤和巳
20勝勝利数(15)20勝
179奪三振(150)160
8完投(10)5
2.80防御率(2.50)2.83
206投球回(200)194
29登板数(25)26
.800勝率(.600).870

2011年(ダルビッシュか?田中将大か?)

最近(と言ってももう10年近く前の話なんですね)で印象深いのは、まだ二人ともNPBにいた頃のダルビッシュと田中のマー君が争った2011年の選考。

選考7基準の比較は以下。

田中将大選考基準ダルビッシュ
19勝勝利数(15)18勝
241奪三振(150)276
14完投(10)10
1.27防御率(2.50)1.44
226.1投球回(200)232
27登板数(25)28
.792勝率(.600).750

二人とも恐ろしい成績ですね。
特に奪三振数と防御率が異常です。

勝ち星こそ惜しくも20勝に満たなかったですが、それ以外は2003年の二人より良い成績です。

色々とセイバーメトリクス系の評価指標で二人を比較している記事などもありまして、この年の二人のDIPSが長いNPBの歴史の中でもナンバー1、2だ、とか。
(まぁ沢村賞の選考基準が投手評価として妥当かどうか議論はありますが、現状この基準がある以上、別の指標で比較しても沢村賞選考という点で言えばあまり意味ないのでしょうが)

果ては、ダルビッシュの代理人になっている父親がメディアで文句言い出したり(笑)。

結局マー君が受賞し、ダルビッシュはこのシーズン限りで舞台をNPBからメジャーに移します。

ダルビッシュはNPB最後の5年間、防御率が1点台、WHIPもほぼ毎シーズン1未満と、無双状態だったわけですが、沢村賞は1回しか受賞していないんですね
(選考7項目をすべて満たしたのに受賞を逃したのが複数回あるのはダルビッシュ投手のみのようです)

考慮されるかもしれない事

さて、だいぶ話が逸れました。
菅野VS大野の行方に戻ります。

選考基準があるとはいえ、どうしても人間が最終的に選ぶ以上、印象度というのも多少は影響してくると思います。

ここでは二人の今シーズンの活躍を振り返って、選考にどう影響するかも考えてみたいと思います。

菅野投手の「開幕連勝記録13」(開幕投手としての日本記録)

連勝記録は、言わずもがな、2013年の田中将大投手が打ち立てた24連勝(しかも無敗)ですが、開幕投手として登板してからの記録、という事であれば今年の菅野投手の13連勝がNPB記録になるそうです。

ただ、今年は手が付けられないなぁ、と思わせながら、記録が途切れた後に連敗。
敗戦はその2つだけでしたが、勝利数も1しか積み上げられず、シーズン終盤の印象度はあまり高くなさそうです。

大野投手の「連続イニング無失点記録45」(歴代12位、左腕歴代2位)

逆に大野投手はシーズン中盤から後半に調子を上げ、連続イニング無失点記録45を達成しました。

これは歴代で12位、左腕に限ると歴代2位にランクインするそうです。

大野投手の後半の追い上げと6完封

連続イニング無失点中に積み上げた4つの完封を含めて、大野投手の今シーズンの完封数は6。

ちなみにシーズン6完封は2018年の菅野投手の8完封、2014年の則本選手の7完封に次いで、2000年代の歴代3位タイに当たります。
(他は2011年のダルビッシュ&マー君ら)

143試合換算すれば7完封越えです。
沢村賞の理念を考えると、完投数と並んでこの完封数の多さは、菅野投手と比較すると好印象になりそうです。

ジャイアンツは優勝チーム

最後に。
沢村賞の選考基準には関係ない、自身の所属チームが優勝したという点。

ただ、MVPほどには考慮されないでしょうが、どうしても最後の決め手に一押し、となれば、「その成績を上げたことでチームを優勝に導いた」という付加価値を考慮される可能性はゼロではない気がします。

まとめ(大野雄大が受賞(願望込み))

いかがでしたでしょうか。

今シーズンはCOVID-19(新型コロナウィルス)流行に伴い、120試合と試合数が短縮、スケジュールもタイトでセ・リーグはCSも無しと、2011年の東日本大震災時以上に異例のシーズンとなりました。

数字そのままはもちろん、スケジュール上の問題から、単純に143試合換算すれば良いという問題でもないと思いますが、選考委員には最低限これ位は考慮した上で、沢村賞の選考を実施してもらいたいです。

その上で、2019シーズンの候補者2人(有原、山口)と比べると、基準を満たしたのは4項目と共通するものの、防御率と完投数で抜群の成績を上げた大野雄大投手が受賞に相応しいと考えます。

菅野投手はおそらくMVPは確実に受賞するでしょうし、沢村賞の存在意義的にも、近年なかなか見られない完投数10を大きく評価してくれることを祈っております。

(2020/11/23 追記)
無事、大野投手が沢村賞を受賞しました。
おめでとうございます!

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